英米首脳、ホルムズ海峡再開の重要性について協議 トランプ氏の艦船派遣呼びかけ後

ないだ海に複数の石油タンカーが停泊している。手前の1隻は護岸に近いが、残りの数隻は沖合にある

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画像説明, ホルムズ海峡に近いオマーン・マスカット沖に停泊するタンカー(3月7日、資料写真)
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イギリスのキア・スターマー首相は15日、ドナルド・トランプ米大統領と電話会談を行い、世界的な海運の混乱を終わらせるため、中東のホルムズ海峡を再開することの重要性について協議した。英首相官邸が発表した。ホルムズ海峡は世界の原油のおよそ20%が通過する重要な海路だが、約2週間前に米・イスラエルがイランへの攻撃を開始して以来、ほぼ封鎖状態が続いている。

トランプ氏は前日の14日、この海路における航行を確保するため、イギリスを含む国々に軍艦の派遣を呼びかけたばかり。

英首相官邸の報道官は、スターマー氏がトランプ氏と「中東で続く情勢と、世界的な海運を混乱させ、コストを押し上げているホルムズ海峡の再開の重要性について協議した」と述べた。

また、「首相は紛争の中で命を落としたアメリカ軍関係者に哀悼の意を示した」ほか、「両首脳は今後も連絡を取り合うことで一致した」とも述べた。

同報道官によると、スターマー氏は別途、カナダのマーク・カーニー首相とも電話で会談し、ホルムズ海峡の封鎖を終わらせることの重要性で一致したという。

イランが事実上、この海域を閉鎖した結果、世界的なサプライチェーンとエネルギー価格が壊滅的な影響を受けている。

また、紛争開始以降、複数の船舶がこの狭い海峡を航行しようとした際に攻撃を受けたと報じられているほか、海運を妨害する試みの一環として、イランがこの水路に機雷を設置したとの懸念も出ている。

イランの新たな最高指導者モジタバ・ハメネイ師によるものとされる声明では、イランはアメリカに対する政治的かつ経済的圧力の手段として、海峡の封鎖を続ける意向だという。

海峡再開が「優先事項」と英閣僚

エド・ミリバンド英エネルギー担当相はこの日、BBCの政治番組「サンデー・ウィズ・ローラ・クンスバーグ」に出演した際、ホルムズ海峡が海運にとって安全となることが「非常に重要だ」と述べた。

また、海峡の再開を「優先事項」と位置づけ、「機雷除去用ドローンを含め、われわれが貢献できるさまざまな方法がある」と述べた。ただし、選択肢の詳細については明らかにしなかった。

イギリスがドローンや艦船の派遣を検討しているかと重ねて質問されると、「ホルムズ海峡の再開に役立つあらゆる選択肢を、同盟国と歩調を合わせて検討しているので、安心してほしい」と応じた。

そのうえで、「紛争を終わらせることが、海峡を再開するための最善かつ最も確実な方法だ」と重ねて述べた。

同じ番組に出演した最大野党・保守党のクレア・コウティーニョ影のエネルギー担当相は、国益にかなうのであれば、イギリスは中東への艦船やドローン派遣を検討するべきだと述べた。

コウティーニョ氏は、国際的な海上輸送路を再開し、国外にある軍事資産を守ることはイギリスの利益になるとしたうえで、保守党は労働党政権よりも早く、アメリカの同盟国にイギリスの軍事基地の使用を認めただろうと付け加えた。

野党・自由民主党のエド・デイヴィー党首は、ホルムズ海峡の航行確保を支援するために艦船を送るべきではなく、代わりに戦争の「緊張緩和」に注力すべきだと主張した。

デイヴィー氏は、この「違法で有害な戦争」においてトランプ氏は「非常に無謀だ」と非難。アメリカの大統領が「自分が何をしているのか分かっていないように見える」状況で、イギリスはその言いなりになるべきではないと述べた。

動画説明, ホルムズ海峡の通航量をタイムラプス映像で、戦闘激化で急減

米エネルギー情報局の推計によると、2025年には1日約2000万バレルの原油がホルムズ海峡を通過した。これは年間では約6000億ドル(約96兆円)のエネルギー取引に相当する。

またこの海峡は、ヘリウムや化学物質の硫酸塩、肥料製造に使われる尿素など、他のコモディティーの重要な交易路でもある。

イランのアッバス・アラグチ外相は、ホルムズ海峡は同国の「敵」に属さない船舶には引き続き開かれていると発言。イランは安全な通航についての「対話を望む国々に開かれている」とも述べた。

アラグチ氏は15日、これまでに複数の国から接触があったと述べたが、国名は明らかにしなかった。

イランは、エネルギー関連の標的への攻撃を、アメリカとイスラエルの攻撃への主要な対応と位置づけており、両国やその協力国に向かうタンカーは正当な攻撃対象になると警告している。

英海上貿易業務調整機関(UKMTO)の最新情報によると、今回の紛争が始まって以来、タンカーを含む少なくとも16隻が、ホルムズ海峡の航路付近で攻撃を受けたと報告されている。

原油価格は、2月28日に戦争が始まって以来、急騰している。紛争前には1バレル約71ドルだったが、9日には同約120ドル近くまで上昇した。その後、価格は下がったものの、高止まりしている。

米空軍の爆撃機が英国内の基地から発進

こうしたなか15日には、米空軍の爆撃機「B1ランサー」2機が、英グロスターシャー州の王立空軍(RAF)フェアフォード基地から発進した。この2機は、強力な地中貫通爆弾(バンカーバスター)や巡航ミサイルを搭載している可能性があるとみられている。

この戦争で使用されている米空軍の大型戦略爆撃機3種の中で、ランサーは兵器搭載量が最も高い。残りの2種は、「B52」と「B2」ステルス機。

ランサーは約7~8時間でイランに到達する予定で、任務全体の所要時間は約15時間になるとみられている。

米空軍の地上要員の1人が、黒い爆撃機の上部で作業を行っている

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画像説明, 米航空機大手ボーイングによると、「B1」は米空軍で最速の爆撃機だという(英フェアフォード)

スターマー首相は当初、アメリカがイギリスの基地をイランへの攻撃に使うことを拒否していた。

その後、イランのミサイル拠点に対するアメリカの「防御的」行動について、フェアフォード基地と、インド洋のディエゴガルシア島の基地の使用を許可した。

一方で、イギリスは「空からの体制転換をよしとしない」との立場を維持している。

トランプ氏は、こうしたスターマー氏の対応を批判し、「ウィンストン・チャーチルとは違う」などと発言。先週には、アメリカにはイギリスに空母を派遣してもらう必要はないと述べたほか、「われわれがすでに勝利した後に戦争に加わる人々は必要ない!」とも、ソーシャルメディアに書き込んでいた。