英南東部で侵襲性髄膜炎の集団感染、高校生と大学生が死亡

木々が植わっている屋外に大勢の若者が立っている。手前のピントがっている3人はマスクを着用している

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画像説明, 侵襲性髄膜炎の集団感染が発生したケント大学では、予防的な抗生物質を受け取るために、学生たちが一日中列を作った
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英イングランド南部カンタベリーで、侵襲性髄膜炎の集団感染が起きている。これまでに2人が死亡、11人が感染が確認されて病院に搬送された。

死亡したのは、フェイヴァシャムのシックス・フォーム(大学進学のための2年制高校)に通う18歳の生徒と、ケント大学の21歳の学生。同大学では感染例の確認を受け、対面式の試験と考課が中止された。

これまでに、同大学と中高3校で感染が確認されている。

英保健安全庁(UKHSA)は、今回の集団感染は「特に規模が大きく」、「近年に例がないもの」と説明。これまでに、カンタベリー一帯の3万人超に連絡を取っているという。

この集団感染は、ケント市内のナイトクラブのイベントに関連しているとみられており、UKHSAは、3月5~7日に「クラブ・ケミストリー」を訪れた人々に対し、「予防措置として抗生物質の投与を受けるよう」呼びかけている。

キャンパス内で予防的な抗生物質を提供

ケント大学では集団感染が確認された直後、防護服を着た医療従事者が、人々を病院に搬送する様子が確認された。

また、1日を通して、マスクを着用した学生や一般の人々が、予防的な抗生物質を受けるためにキャンパス内に列を作った。

白い防護服を着た3人が、黄色い救急車の前を歩いている。
画像説明, 感染が発生した直後、医療従事者が大学に駆け付けた

UKHSAはこれまでに、カンタベリー地域で3月13日~15日に、髄膜炎の兆候や症状を13件、把握していると説明している。

同庁の報道官によると、感染例が増加していると同庁は14日遅くに報告を受けた。「直ちに対応し、危険が及ぶ可能性のある人々には14日夜と15日に連絡をとった」と、報道官は述べた。

また、「UKHSAはケント大学と連携し、1万6000人の全学生に助言の文書を送付した。最近の感染事例、兆候と症状、抗生物質の入手方法、体調が悪いと感じた場合の対応を記載している」とした。

ただし、大学の1万6000人全員が抗生物質を受けるわけではない。

UKHSAサウスイースト・イングランドのトリッシュ・マンズ副ディレクターは、人々に症状への注意と迅速な行動を呼びかけた。

「学生たちと職員たちが、髄膜炎菌による髄膜炎と敗血症の兆候と症状に注意することが不可欠だ。症状には、発熱、頭痛、呼吸の速まり、眠気、震え、嘔吐、手足の冷えなどが含まれる」と同氏は述べた。

「敗血症では、ガラスのコップの側面を押しつけても消えない特徴的な発疹が出ることもある」

「また、学生は髄膜炎の初期症状を見逃す危険性が特に高い。ひどい風邪やインフルエンザ、さらには二日酔いなど、別の病気と容易に混同してしまう可能性があるからだ」

髄膜炎や敗血症の症状が現れて体調が悪くなった人は、最寄りの救急外来を受診するか、緊急事態用の電話番号「999」に電話するよう促されている。

死亡した18歳の生徒が通っていた学校があるフェイヴァシャム選出のヘレン・ウェイトリー下院議員は、BBCのラジオ番組に出演し、「非常に心配な時期だ。地元の学校や、例えば自分の子どもが接触者だったのかを心配する保護者と連絡を取っている」と述べた。

新型コロナウイルスのパンデミック期に保守党政権で保健次官を務めていた同議員は、「迅速に対応し、早期に対処するほど、集団感染を封じ込められる可能性は高まると思う」と話した。

クラブ・ケミストリーを経営するルイーズ・ジョーンズ=ロバーツ氏は、クラブを訪れた人物が「後から髄膜炎と診断された」と、UKHSAからスタッフに通知があったと説明した。

また、スタッフの1人が髄膜炎と診断されたほか、さらに2人が救急外来で検査結果を待っていることを明らかにした。

同氏は、UKHSAから追加の助言があるまでクラブは閉鎖するとし、「家族がどれほどの思いをしているか想像もつかない。髄膜炎は健康な若者にも影響を与え、これは壊滅的だ」と述べた。

侵襲性髄膜炎とは?

髄膜炎は、脳と脊髄を覆う保護膜が感染する疾患。

誰でも感染する可能性があるが、乳幼児や10代の若者、若い成人に最も多く見られ、迅速に治療しなければ非常に深刻な状態になる。

感染の原因は特定の細菌またはウイルスで、検査で判別する。

細菌性髄膜炎はウイルス性に比べると珍しいが、重症度は高い。血液中毒や敗血症を引き起こすことがあり、脳に影響を与えることもある。

この急性で重度の感染が「侵襲性髄膜炎」として知られている。これは、細菌が血流や脳の膜に侵入している状態を指す。

ケントで発生した侵襲性髄膜炎の集団感染で死亡した2人は、18歳と21歳だった。

今回の集団感染を引き起こした菌株はまだ特定されていないが、イギリスで現在発生している髄膜炎菌感染症の大部分は、B群(MenB)が原因となっている。

症状は突然現れることがあり、以下が含まれる。

・ガラスのコップの側面を強く押しつけても消えない発疹

・突然の高熱

・激しく悪化していく頭痛

・首のこわばり

・嘔吐と下痢

・関節と筋肉の痛み

・強い光を嫌がる状態

・手足が非常に冷たくなる

・けいれん

・混乱やせん妄

・極度の眠気や、なかなか目覚められない状態

一部の感染者は症状が出ないまま、鼻や喉に細菌を持っていることがあるが、咳やくしゃみ、キス、食器の共有などを通じ、唾液やつばから感染が広がる。

髄膜炎患者から感染が広がることもあるが、これはめずらしいという。

また、髄膜炎には複数回かかる可能性がある。

予防はできるのか、ワクチンはあるのか

現在は2種類のワクチンがある。

MenACWYワクチンは、髄膜炎を引き起こす可能性のある細菌のうちA、C、W、Y群の4種類に対する免疫を提供する。MenBワクチンは、髄膜炎菌B群に対する免疫を助ける。

髄膜炎は他の感染症の合併症として起きることがあるため、その他の複数のワクチンにも感染防止効果がある。

乳幼児向けの6 種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日せき、B型肝炎、ポリオ、Hib感染症)や、肺炎球菌ワクチン、MMRVワクチン(はしか、おたふく風邪、 はしか、水ぼうそう)などが、髄膜炎を含む疾患への免疫を提供するとされる。

一般に、ワクチンから最大限の免疫効果を得るには数週間かかり、追加接種が必要な場合もある。