イラン安全保障当局トップのアリ・ラリジャニ氏、イスラエルの空爆で死亡

白いひげをたくわえた男性が、口を閉じ、右の方向を見ている。男性はめがねをかけ、黒い服を着ている

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画像説明, イランの前最高指導者アリ・ハメネイ師の側近だったアリ・ラリジャニ氏(2025年8月13日、レバノン・ベイルート)
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イスラエルは17日、イランの国家安全保障最高評議会(SNSC)のアリ・ラリジャニ事務局長と、民兵組織バスィージのゴラムレザ・ソレイマニ司令官が、イスラエルによる空爆で死亡したと発表した。イラン当局も後に、両氏の死亡を認めた。

「ラリジャニとバスィージの司令官は昨夜(16日夜)排除され、地獄の底にいる殲滅(せんめつ)計画の責任者であるハメネイや悪の枢軸から排除されたすべての者に加わった」と、イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は述べた。

イラン当局も、両氏が死亡したことを認めた。また、ラリジャニ氏の息子と複数の護衛が死亡したことも明らかにした。

ラリジャニ氏は、イスラエルとアメリカによる先月28日の最初の空爆でイラン最高指導者アリ・ハメネイ師が殺害された後に暗殺された、最も高位のイラン当局者。

米・イスラエルのイラン空爆は、中東全域に波及する戦争を引き起こしている。イランは報復として、イスラエルや、米軍施設があるアラブ諸国に向けてミサイルとドローンを発射している。

イランの攻撃で湾岸諸国での原油生産は停止し、重要な海上交通路のホルムズ海峡を通じた輸出が妨げられるなど、原油価格は急騰している。

SNSCは18日未明、ラリジャニ氏と息子モルテザ氏、側近の1人、複数の護衛が殺害されたことを認めた。

イラン国営テレビでは、「イランとイスラム革命の前進のための、生涯にわたる闘いの後、彼(ラリジャニ氏)は(中略)神の召しに応えた」とのSNSCの声明が読み上げられた。

イラン側の発表の数時間前、イスラエル国防軍(IDF)は、イラン・テヘラン近郊での空軍による「精密攻撃」でラリジャニ氏を殺害したと発表していた。

「ハメネイが排除されたことを受け、ラリジャニはイラン体制の事実上の指導者としての地位を固め、イスラエル国家および地域各国に対する戦闘努力を主導した」と、IDFは述べた。

しかし17日遅く、ラリジャニ氏のソーシャルメディア・アカウントには、日付のない手書きのメモが投稿された。イラン国営メディアは、このメモは17日に書かれたものだと伝えた。

メモには、今月4日にスリランカ沖で、米軍の潜水艦による魚雷攻撃で死亡したイラン軍艦の84人の「戦士たち」を称える内容が記されていた。イランでは17日夜に乗員たちを追悼する式典が開かれた。

イラン国営テレビは、バスィージのソレイマニ司令官からのものだとする、乗員に言及した同様のメッセージも読み上げた。

イランの前最高指導者と国防幹部の関係を示す図表。トップにアリ・ハメネイ師、その下にアリ・ラリジャニ国家安全保障最高評議会事務局長、アリ・シャムハニ国防評議会事務局長、マスード・ペゼシュキアン大統領が並ぶ。さらにその下に、モハンマド・パクプール、イラン革命防衛隊総司令官、アジズ・ナシルザデ国防相、アブドルラヒム・ムサヴィ、イラン軍参謀総長が並ぶ。出典はイスラエル国防軍、イスラム共和国通信。画像はゲッティ、ロイター

バスィージは推定100万人の志願兵から成る民兵組織で、しばしば街頭に動員され、反対勢力を武力で弾圧する。同組織は強力な影響力を持つイラン革命防衛隊(IRGC)の統制下にある。

「イラン国内での抗議行動に際し、とりわけ最近デモが激化した局面では、ソレイマニの指揮下にあるバスィージ部隊が主要な弾圧作戦を主導した」と、IDFは述べた。

IDFはまた、17日にテヘラン各地のバスィージの検問所を標的とした複数の空爆の一つを捉えたものだとする映像も公開した。

イランの地元メディアは先週、テヘラン市内の四つの検問所がイスラエルの空爆を受け、多数の治安要員が死亡したと報じていた。

ラリジャニ氏とは

ラリジャニ氏はIRGCの元司令官で、国営放送IRIBのトップとして頭角を現した。同職を10年務めた後、2004年にハメネイ師の安全保障顧問に就任した。

また、西側諸国との核をめぐる交渉では首席交渉官を務め、イラン議会議長も歴任した。

イスラム革命のイデオロギー的原則を堅持する強硬派「原則派」の指導者だったこともあるが、近年は「穏健保守」とも形容されていた。

ラリジャニ氏は昨年8月にSNSC事務局長に任命された。同年12月から今年1月にかけてイラン全土を席巻した抗議デモに対して、バスィージやほかの治安部隊による前例のない弾圧を指揮したとみられている。人権活動家によると、この弾圧で少なくとも抗議者6508人が殺害され、5万3000人が逮捕されたという。

イランの報道機関は、同氏をハメネイ師の顧問と位置づけていた。

米・イスラエルとの戦争が起きる以前、ハメネイ師はラリジャニ氏に対し、イラン指導部の暗殺を含むイスラエルとアメリカによる大規模攻撃をイランが生き延びるための計画を策定するよう命じたと報じられている。ハメネイ師の死後、ラリジャニ氏の立場はさらに強力なものとなった。

テヘランの路上で、黒い上着を着てサングラスをかけた白髪のラリジャニ氏が、マイクを持った報道陣と向かい合って立ち、話をしている。周囲には大勢の人が集まり、道路は人であふれている。イラン国旗を掲げる人たちもいる

画像提供, Ali Larijani via X/via REUTERS

画像説明, イランのテレビ局に応じるラリジャニ氏(中央)。同氏が公の場に姿を見せたのは、パレスチナとの連帯を示す毎年恒例の「コッズの日」の行進が最後となった(13日、テヘラン)

新しい最高指導者には、ハメネイ師の息子モジタバ師が選ばれた。しかし、父親を殺害したイスラエルの空爆でモジタバ師も負傷したと報じられており、開戦以降、公の場に姿を見せず、最新の写真や映像にも登場していない。

モジタバ師とは対照的に、ラリジャニ氏はソーシャルメディア上で、ドナルド・トランプ米大統領の発言に定期的に反応していた。テヘラン市内で13日に行われた「コッズの日」の行進では、支持者らと歩く姿が撮影された。

イラン当局がインターネットを遮断していることから、イラン国内にいる人たちと連絡を取るのは極めて難しい。それでも、体制に反対するイラン国民は、ラリジャニ氏死亡の知らせを喜ぶテキストメッセージをBBCペルシャ語に送った。

テヘラン在住の30代男性は「意思決定の中枢を止めなければならないので、これは非常に重要な一歩だったと思う」と述べた。

テヘラン近郊カラジに住む別の男性は、「あなた方には信じがたいかもしれないが、彼らが死ぬと本当にうれしい。彼らは犯罪者で、その手は血に染まっているので」と述べた。

イラン政府によると、開戦以降、米・イスラエルの攻撃で1300人以上が死亡している。うち226人は女性、204人は子どもだという。

一方でスラエルでは、イランのミサイル攻撃でこれまでに12人が死亡したと、イスラエル当局は発表している。

イラン軍が複数のミサイル攻撃を仕掛けた17日、イスラエル全土で警報が鳴り響いた。複数の火災が報告されたが、イスラエルの緊急当局は負傷者はいなかったとしている。

こうした中、アラブ首長国連邦(UAE)では、迎撃されたイランのミサイルの破片がアブダビのバニヤス地区に落下し、パキスタン人1人が死亡したと、UAE当局が発表した。UAE東部フジャイラの港は、4日間で3度目のドローン攻撃を受け、石油の積み込み作業が一部停止された。