英首相、EUとのより緊密な関係を目指すと表明 イランでの戦争で英米関係に緊張

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ベッキー・モートン政治記者
イギリスのキア・スターマー首相は1日、米・イスラエルとイランとの戦争を受け、イギリスは欧州連合(EU)との経済関係をさらに緊密にすると述べた。年内に予定されているEUとの首脳会議を活用し、経済と安全保障をめぐる一層の協力をEU側に求めるとしている。
この戦争では、これ以上深く関与することを避けるというスターマー氏の姿勢をめぐり、英米関係の緊張が高まっている。
スターマー氏は、この紛争がイギリスに影響を及ぼすと警告する一方、政府は生活費の負担を和らげる取り組みを行っていると国民に安心を呼びかけた。
イギリスではここ数カ月、スターマー首相とレイチェル・リーヴス財務相が、EUとのより緊密な通商関係を求める立場を繰り返し示してきた。
スターマー氏は今回、米・イスラエルとイランの対立により、その喫緊性が増してきたと述べた。
「世界がこの不安定な道を進み続けるなか、我々の長期的な国益には、ヨーロッパの同盟国や欧州連合とのより緊密な連携が必要だと、ますます明らかになっている」
スターマー氏はさらに、イギリスのEU離脱(ブレグジット)が「我々の経済に深刻な損害を与えた」と述べ、「我々の安全保障を強化し、生活費を引き下げる機会は、無視できないほど大きい」と語った。
イギリスとEUは昨年5月、関係の再構築に向けた協定に合意。漁業権や通商、防衛、エネルギーなどの分野での関係強化を約束した。今夏には、英・EU首脳会議が開かれる見通しだ。
スターマー氏は、今年のサミットは「昨年の首脳会議で合意したこれまでの約束を追認するだけではなく」、「より野心的なものになる」と語った。
記者会見では、加盟国間で財やサービス、人の自由な移動を可能にし、多くの共通規則や基準を適用するEU単一市場に、イギリスが再び近づいているのかという質問が出た。
スターマー氏はこれに対し、「防衛、安全保障、エネルギー、排出量、経済に関する協力を強化すべきだと考えている」と述べた。
そのうえで、「単一市場に関しては、もっと多くのことを実現できると強く思っている。我々の経済的利益にも大きくかなうからだ」と語った。
一方で、労働党が総選挙で公約に掲げた「単一市場にも、関税同盟にも、自由移動にも戻らない」という方針は維持されると述べた。
EUとの関係をめぐっては、英野党・自由民主党が、政府はさらに踏み込んで関税同盟を交渉すべきだと求めている。関税同盟とは、他の加盟国から入る物品に税金を課さず、同盟外から入る物品には互いに同じ関税を課す合意を指す。
また、最大野党・保守党は、スターマー氏が自身の失敗をブレグジットのせいにしていると非難している。
ヨーロッパかアメリカかの選択を迫られているのではないかとの質問に、スターマー氏は「私は選ばない。アメリカともヨーロッパとも強い関係を持つことが我々の利益になると考えている」と答えた。
一方で、ヨーロッパとの関係を強化することは、英米の関係強化にもつながると主張。アメリカの歴代大統領はヨーロッパに、防衛と安全保障でより多くの役割を果たすよう求め続けてきたからだと述べた。
ドナルド・トランプ米大統領はここ数週間、イランへの最初の攻撃の際にアメリカがイギリスの基地を使うことをスターマー氏が認めなかったことについて、繰り返し批判している。
イギリスはその後、アメリカがイギリスの基地を使用してイランのミサイル関連施設を攻撃することを認めた。
トランプ氏は1日付の英紙デイリー・テレグラフで、イランでの戦争にヨーロッパ諸国が加わらなかったことを受け、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を検討していると述べた。
エネルギー価格は「ホルムズ海峡の再開次第」
記者会見では、上昇を続ける原油価格と生活への影響にも質問が及んだ。
イランは開戦以来、世界の石油輸送の要であるホルムズ海峡を実質的に封鎖しており、石油とガスの卸売価格の急騰を招いている。
イギリスでは7月に家庭向けエネルギー料金の上限が更新されるため、原油価格が上昇し続ければ、光熱費が急激に上昇する可能性が高い。
スターマー氏は、「どれほど激しい嵐であっても、我々はこれに耐えられる立場にあり、より強く、より安全な国家としてこれを乗り越えるための長期的な計画を持っている」と述べた。
また、今月から実施される複数の生活費負担軽減策を強調し、その中にはエネルギー料金から一部のグリーン課徴金を撤廃する措置や、全国生活賃金の引き上げが含まれるとした。
そのうえで、生活費に焦点を当てた政府の対応は「常に先手を打ってきた」と強調した。
しかし、経済協力開発機構(OECD)は、主要経済国の中で、イギリスはこの戦争による経済成長への打撃が最も大きいと警告している。
燃料税を引き上げず、自動車利用者を安心させられるかとの質問に、スターマー氏は税率は9月まで据え置かれていると述べた。
また、家庭向けの支援は今後も検討を続けると述べた一方、「多くは紛争がどれだけ続くか」と、ホルムズ海峡の再開がどれほど早く進むかにかかっていると述べた。
こうしたなか、イギリスのイヴェット・クーパー外相は2日にも、欧州諸国や湾岸諸国を含む35カ国とのオンライン会合を主催する。
スターマー氏はこの会合について、ホルムズ海峡を「戦闘が終わった後に利用可能で安全な状態にする」ための措置を検討すると説明。「容易ではない」としつつ、同海峡の再開はイギリスの国益にかなうと述べた。





