トランプ氏、イランでの目標は「完遂間近」とテレビ演説 「停戦を求められた」との主張は虚偽とイラン

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アメリカのドナルド・トランプ大統領は1日午後9時(日本時間2日午前10時)ごろから、イラン情勢をめぐり国民向けに演説を行った。その中でトランプ氏は、イランのミサイルやドローンの発射能力が劇的に低下したとし、イスラエルと共に進めている対イラン攻撃における「核心的な戦略目標は完遂間近」だとの考えを示した。これに先立ちトランプ氏は、「イラン新政権の大統領」がアメリカに停戦を求めてきたと、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿。これに対してイラン側は「虚偽で根拠がない」と否定した。
約19分にわたる演説は、米・イスラエルのイランに対する「エピック・フューリー(壮絶な怒り)」作戦の開始から1カ月が経過したタイミングで行われた。
トランプ氏は、この作戦がなぜアメリカと世界の安全のために必要なのかを説明すると述べた。
また、「今夜、イラン海軍は消滅し、空軍は壊滅状態にある。彼らの指導者の大半は(中略)すでに死んでいる」と、作戦の成果を強調。
そして、イランのミサイルやドローンの発射能力は劇的に低下したとも付け加えた。
イランの核兵器開発は「目前だった」
トランプ氏は、過去47年間にイランやその代理勢力が関与したとするテロ攻撃などを列挙し、イランの統治体制を暴力的で残忍なものだと非難した。昨年末に起きたイランの反政府デモで、当局の弾圧により数千人が死亡したことにも言及した。
そのような指導者たちが核兵器を手に入れることを許すわけにはいかないと、トランプ氏は力説。「私は、絶対にそんなことはさせない」と述べた。
トランプ氏はまた、イランは核計画を放棄せずに、より射程距離の長いミサイルの開発を急速に進めていたと主張。イランの核兵器開発は「目前に迫っていた」とした。
また、2015年に当時のバラク・オバマ米政権が英独仏中ロとイランと結んだ核合意は間違いだったとし、第1次トランプ政権時代にこれを破棄できたことを光栄に思うとも述べた。
昨年6月に自らが命じた、イランの核計画に対する軍事攻撃「ミッドナイト・ハンマー(真夜中の鉄つい)作戦」については、イランの「核施設を完全に破壊」する、「これまでに誰も見たことがない」作戦だったと語った。
戦略目標は「完遂間近」、イラン戦争は「未来への真の投資」
トランプ氏は今回の戦争について、アメリカがイランの「体制がアメリカを脅かしたり、国境を越えて力を誇示する能力を体系的に解体している」と説明。
イランの海軍、空軍およびミサイル生産能力は破壊されたとし、「今夜、これらの核心的な戦略目標が完遂間近だと報告できることをうれしく思う」と述べた。
トランプ氏はまた、イランとの戦争で死亡した米兵13人を称えるためにドーヴァー空軍基地を訪れたとし、「我々は彼らに敬意を表する。そして今こそ、任務を完遂することで彼らをたたえなければならない」と述べた。
トランプ氏は、アメリカの軍事力は止められないとも述べ、イランとの戦争はアメリカの子どもたちと未来の世代のための「真の投資」だとした。
続けて、20世紀と21世紀に起きた数々の戦争に言及。いずれの戦争も終結するまでに何年もかかったが、イランとの戦争は32日間しか続いていないと述べた。
そのうえで、「今夜、すべてのアメリカ国民は、イランの侵略という悪行と、核の脅迫という亡霊から、ついに解放されるその日を心待ちにすることができる」と主張。戦争が終われば「アメリカ合衆国はかつてないほど安全で強く、さらに繫栄し、より偉大になる」と約束し、演説を締めくくった。
「明確な計画」示されず、戦争目的に疑問と専門家
アメリカの前政権でアントニー・ブリンケン前国務長官の上級顧問を務めたメリッサ・トゥファニアン氏はBBCに対し、トランプ氏の演説によって、アメリカの聴衆はイランとの戦争について「もっと混乱」した可能性が高いとの見方を示した。
「今日の演説を見て、(トランプ氏に)明確な計画や明確な予定があり、自分たちの安全がより確保され、もっと安心できると感じるアメリカ人は1人もいないと思う」と、トゥファニアン氏は述べた。
アメリカの北大西洋条約機構(NATO)大使だったアイヴォ・ダールダー氏は、トランプ氏の演説は、多くの需要な疑問に答えていないとBBCに指摘。
トランプ氏について、イランの核能力や海軍、ミサイルが破壊されたと述べたものの、アメリカがイランでの軍事行動を継続している理由などをはっきり示さなかったとした。
「自分たちはもっと安全になったと思えるはずがない。(中略)米市民も同様の疑念を抱いていると思う」(ダールダー氏)
同氏はまた、トランプ氏が演説で、NATOの同盟国に強く反発したり、NATOからの離脱をちらつかせたりはしなかったが、後にソーシャルメディアでそうした発言をする可能性が高いとも述べた。
「イランが停戦求めた」とトランプ氏、イラン側は否定
トランプ氏は演説に先立ち、「イラン新政権の大統領」がアメリカに停戦を求めてきたと、自分のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」に投稿した。
停戦を求めたイラン高官の名前は明かさなかったが、「前任者たちよりもはるかに過激ではないし、はるかに賢明」な人物だと形容した。
停戦については、「ホルムズ海峡が開かれ、自由で、明確になった時点で検討する。それまでは、イランを跡形もなく消し去るか、石器時代へ逆戻りさせる!」と書いた。
これに対し、イラン外務省のエスマイル・バガエイ報道官は、同国がアメリカに停戦を求めたとするトランプ氏の主張を「虚偽で根拠がない」と否定した。イラン国営テレビが伝えた。
戦争終結に向けた動きをめぐっては、アメリカはかねてから、イランとの協議が進行中で、イランが合意を望んでいるなどと主張している。しかしイランは、アメリカとの交渉そのものを否定している。
米軍のイラン攻撃、1万2300カ所超に

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アメリカ中央軍(CENTCOM)は1日、対イラン攻撃の最新状況を発表した。それによると、2月28日の開戦以降に攻撃したイランの標的は、1万2300カ所超に上る。
目標には、イランの指揮統制センター、弾道ミサイル関連拠点、貯蔵庫が含まれる。
イランの船舶155隻超が「損傷または破壊された」とも、CENTCOMは報告している。
開戦以降に実施した「1万3000超」の戦闘飛行に参加した航空機には、F-22戦闘機、F-35戦闘機、B-1、B-2、B-52の各爆撃機などが含まれるという。
イラン首都に攻撃、高官が負傷と現地報道
イランの首都テヘランではこの日も、複数の攻撃が報告され、市内で黒煙が上がっているのが確認された。
テヘランの情報筋はBBCに対し、激しい空爆が続いていると話した。
イラン・メディアも、新たな爆発が複数起きたと伝えた。
こうした中、イラン・メディアは、同国の高官カマル・ハラジ氏が空爆で重傷を負ったと報じた。妻は死亡したとされる。ハラジ氏はイラン体制内の改革派とみなされている。
ハラジ氏は外相を務めた経験があり、2月28日の開戦直後に暗殺されたイラン前最高指導者アリ・ハメネイ師の顧問も務めた。

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イランの湾岸諸国への攻撃も続く
米・イスラエル攻撃に対するイランの報復攻撃も収まる気配がない。
アラブ首長国連邦(UAE)はこの日、イランから弾道ミサイル5発が発射されたと発表した。
UAE国防省によると、ドローン攻撃も35回受けた。開戦以降にイランから発射された弾道ミサイルは計438発、ドローンは計2012機に上っているという。
ドバイの広報当局によると、攻撃を阻止するため、市内各地で防空システムが展開された。
UAEではこれまでに、軍関係者2人が死亡したほか、軍事請負業者1人と民間人9人も死亡している。
カタールでは石油タンカーがイランの巡航ミサイル攻撃を受け、乗員が避難する事態となった。カタール国防省が発表した。
国営企業カタールエナジーがリース契約するタンカー「アクア1」は、同国の領海内で攻撃を受けた。乗員21人は全員脱出し、負傷者はいなかった。
イランのイスラム革命防衛隊(IRGC)は、「アクア1」へのミサイル攻撃を認めた。同タンカーはイスラエルが所有しているものだと、IRGCは主張している。
湾岸地域および東地中海の島国キプロスの防衛にあたるイギリス軍は、ヨルダン、バーレーン、キプロスなど複数の国の上空で、イランのドローンを計10機撃墜した。英国防相が発表した。
同省は、英空軍が「脅威が高まる地域」で複数の無人機を攻撃したと説明したが、具体的な場所は明らかにしなかった。
イギリスは3月31日、イランの報復攻撃への防衛措置として、中東に追加部隊を派遣し、さらなる防衛システムを展開する方針を発表したばかり。
対イラン戦争の死者、5000人超に
ロイター通信は、複数機関のデータをもとに、対イラン戦争の死者が5000人を超えたと伝えている。BBCはこれらの数字を独自に検証できていない。
報道によると、イランでは3519人が死亡したとされる。アメリカ拠点の「人権活動家通信(HRANA)」は、このうち1598人が民間人で、少なくとも244人の子どもが含まれるとしている。
赤十字社と赤新月社は2月27日、米・イスラエルの攻撃によりイランで少なくとも1900人が死亡し、2万人が負傷したと発表していた。ただ、この数字に、3月4日にスリランカ沖で米軍がイラン軍艦を攻撃した際に死亡したとされる104人が含まれているかは不明だ。
レバノンでは、子ども124人を含む1318人が死亡したとされる。イスラエルは3月2日に、イランの支援を受けるイスラム教シーア派組織ヒズボラが拠点を置くレバノンへの攻撃を開始。これまでに、ヒズボラの戦闘員400人超が死亡している。
少なくとも9人のレバノン兵が死亡したほか、インドネシア人の国連平和維持要員3人も別の攻撃で死亡した。
イラクでは少なくとも107人が死亡したとされる。イラク保健当局によると、この数字には民間人、イランとつながりのあるシーア派武装組織「人民動員隊」の構成員、アメリカと同盟関係にあるクルド人治安部隊ペシュメルガの戦闘員、警察・軍関係者が含まれる。イラクの港湾付近で起きたタンカー攻撃で死亡した、外国人乗組員1人も含まれるという。また、対テロ訓練を提供していたフランス人兵士1人も、ドローン攻撃で死亡した。
イスラエルでは、イランとレバノンから発射されたミサイルで19人が死亡したと、同国の救急サービスは発表している。イスラエル軍はまた、イスラエル兵10人がレバノン南部で死亡したとしている。3月22日には国境付近で、イスラエル軍の誤射によりイスラエル人農家1人が死亡した。
アメリカ人の死者は13人に上るとされる。イラクでの、米軍の空中給油機の墜落では、軍関係者6人の死亡が確認された。米軍によると、イランでの作戦中に7人が死亡したという。
そのほかの中東諸国でも死者が報告されている。アラブ首長国連邦では11人、カタールとでは7人、クウェートでは7人、パレスチナ・ヨルダン川西岸地区では4人、シリアでは4人、バーレーンでは2人、オマーンでは2人、サウジアラビアでは2人の死亡が確認されている。











