英首相、国外情勢に「振り回されてはいけない」と主張 生活費高騰などに対応約束

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ケイト・ワネル政治記者
イギリスのキア・スターマー首相は9日、イランでの紛争のような「衝撃」が頻発する「不安定で危険」な世界に対処するため、イギリスはいっそう強靭(きょうじん)にならなくてはならないと警告した。
英紙ガーディアンへの寄稿でスターマー首相は、国民が「国外の出来事に振り回されない」で済むよう、自分は「長期的な視点で考え、この国を作り替えている」のだと書いた。
民放ITVのポッドキャスト番組「トーキング・ポリティクス」でも、「国中の家庭が、プーチンやトランプの行動のせいで(中略)生活費が上がったり下がったりする現実に、うんざりしている」と話した。
スターマー氏は現在、3日間の日程で、中東地域の同盟国を歴訪している。8日にはサウジアラビアでムハンマド・ビン・サルマン皇太子と会談。9日にはアラブ首長国連邦(UAE)とバーレーン、カタールを訪れた。
米・イスラエルとイランの紛争をめぐっては、一時的な停戦合意にレバノンが含まれるのかどうかについて意見が食い違い、緊張が高まっている。
スターマー氏は9日夜、アメリカのドナルド・トランプ大統領と電話会談を行った。英首相官邸は、両首脳が、紛争の結果として事実上封鎖されているホルムズ海峡について、「船舶の航行を再開に向けた実務的な計画」の必要性について協議したと述べた。
ホルムズ海峡の閉鎖は、ガソリン価格や食料品価格を押し上げる形で、イギリスの生活費に影響を及ぼしている。
「エネルギーの自立」が必要と
ITVのポッドキャスト番組でスターマー氏は、過去2カ月間の出来事が、イギリスに「エネルギーの自立」が必要な理由を示したと述べた。
「(ロシア大統領のウラジーミル・)プーチンやトランプの行動のせいで、全国の家庭の光熱費が上がったり下がったりして、企業のエネルギー料金も上がったり下がったりする事態に、私はうんざりしている」と首相は強調した。
一方、ガーディアンへの寄稿では、2008年の金融危機、ブレグジット(イギリスの欧州連合離脱)、新型コロナウイルスの流行を挙げ、イギリスは「20年近くにわたりさまざまな危機に振り回されてきた」と述べた。
「ウェストミンスター(議会)の対応は常に同じだった。危機を管理し、その場しのぎの対策を見つけ、その後、必死に現状を再主張しようとする」
そのうえでスターマー氏は、「今回は違う」と約束し、イランでの紛争を「越えてはならない一線にしなくてはならない」と書いた。
また、再生可能エネルギーへの投資、労働者の権利強化、2人目以降の子どもに対する給付上限の撤廃といった労働党政権の政策が、進行する世界的な不安定化に、国として備える助けになると強調した。
「なぜなら、強靭性こそが私たちに主導権を与えるからだ。それがなければ、私たちは国境の向こう側で起きる出来事に、常に進路を狂わされる」
9日にシティ・オブ・ロンドン市長主催の晩餐会で演説したイヴェット・クーパー外相も、スターマー氏の考えに同調した。
クーパー外相は、「イラン危機は一世代に一度の衝撃だと考えたくなるかもしれないし、それは心を落ち着かせる発想かもしれない」と語った。
「だが、国際的な出来事が経済的な大波となって世界を駆けめぐり、イギリスを直撃したのは、この6年で3度目だ。新型コロナウイルスのパンデミック、ウクライナ侵攻、そして今回のイラン紛争だ」
「不安定と変動性はますます慢性化し、混乱は新たな常態になりつつある。我々が直面している新しい現実は、イランでの戦争で始まったわけではなく、海峡が再開しても終わらない」
アメリカへの依存を批判する野党も
首相の一連の発言に対し、最大野党・保守党のケヴィン・ホリンレイク幹事長は「キア・スターマーは強靭さとエネルギー安全保障を望んでいると言うが、それならなぜ、北海での掘削を禁止し、福祉改革から逃げているのか?」と指摘。
「国内の石油・ガス労働者に背を向け、エネルギー依存を外国に委ね、何百万人もの人々を就労ではなく給付に縛り付けたままでは、強靭な経済は築けない」と批判した。
野党・自由民主党の外交担当報道官を務めるキャラム・ミラー下院議員は、「国がいっそう強靭にならなくてはならないと首相が言うのは正しいが、我々が直面している最大の戦略的課題の名前を口にしないなら、達成できない」と述べた。
「トランプが率いるアメリカを、もはや信頼できないことは明らかだ。政府は、ヨーロッパの最も近い同盟国との関係再建に向け、できる限りのことを行うべきだ」
野党・リフォームUKの報道官は、「世界的な危機に振り回されたくないなら、答えは明白だ。自国のエネルギーを使い、国境を管理し、イギリス国民を最優先することだ」と述べた。
野党・緑の党のザック・ポランスキー党首は、「スターマーは、緑の党が何年も訴え、彼自身が批判してきた現実についに目覚めた。我々は安全保障をアメリカに頼ることはできない。ヨーロッパの安全保障パートナーシップが必要だ」と述べた。
ポランスキー氏はさらに、「確かに、化石燃料への依存は終わらせなければならない。しかし、スターマーの言葉は計画ではない。エネルギー料金は急騰し、貧富の差は拡大しているのに、この政権は周辺部分をいじっているだけだ」と付け加えた。











