トランプ氏、英国のイラン対応に「満足していない」 スターマー氏の「戦争に巻き込まれない」発言受け

トランプ氏がマイクの前で、左手の人差し指で何かを指さしながら話している。濃い色のスーツに白いシャツ、黄色のネクタイを着用し、襟には星条旗のバッジを付けている

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画像説明, トランプ米大統領
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リチャード・ウィーラー政治記者、ベッキー・モートン政治記者

アメリカのドナルド・トランプ大統領は16日、イラン情勢への対応をめぐり、イギリス政府を改めて批判した。イギリスのキア・スターマー首相がこの日、同国は「より広範囲な戦争」に巻き込まれないと述べたのに反応した。

トランプ氏はスターマー氏の発言を受け、イギリスには「満足していない」と述べた。また、重要な石油輸送路であるホルムズ海峡の再開に向けた取り組みに、イギリスは「積極的に関与すべきだ」と付け加えた。

その後に行われた記者会見でもトランプ氏は、「私を大いに失望させた国がいくつかある」と述べ、イギリスを名指しした。また、自分は今までイギリスを「同盟国のロールスロイス」だと考えていたと語った。

スターマー氏はこの日、ホルムズ海峡の再開に向けて同盟国と「実行可能な共同計画」に取り組んでいると述べた。

また、イギリスはすでにこの海域に機雷掃海艇を配備しているものの、今後どのような行動を取るかについては決定していないとした。

イランは米・イスラエルによる攻撃を受け、世界で最も交通量の多い石油輸送路を実質的に封鎖。その結果、原油価格が急騰している。

イランは、アメリカと関係があるとみなした船舶を攻撃すると警告している。船舶にとっては、同海峡に敷設された機雷による危険もある。

「首相が決断を」、「同盟国やチームと協力」

トランプ氏は、輸送路を確保するため、イギリスや日本などの同盟国に軍艦を派遣するよう促してきた。

スターマー首相は当初、アメリカがイギリスの基地をイランへの攻撃に使うことを拒否し、トランプ氏の怒りを買った。しかしその後、イランのミサイル拠点に対するアメリカの「防御的」行動についてのみ、基地の使用を許可している。

トランプ氏は、各国首脳にホルムズ海峡での支援を呼び掛けていることについて、「我々が支援を必要としているからではなく、彼らがどう反応するかを知りたいからだ」と示唆した。

また、戦争に対するイギリスの姿勢に「非常に驚いた」と述べ、両国のウクライナでの協力を強調した。

「我々はウクライナで彼ら(イギリス)と協力する必要はない。しかし彼らは、機雷掃海艦が周辺にいるのに関与したくないと言う」、「信じられない話だ」と、トランプ氏は語った。

トランプ氏はさらに、スターマー氏が「戦争が事実上、終わった直後」に空母の派遣を申し出たと非難し、「イギリスには満足していない」と述べた。

「関与するだろう、そう、たぶんそうだ。しかし熱心に関与すべきだ」

その後の記者会見でトランプ氏は、スターマー氏に「艦船を数隻送り、掃海艇があるなら、それも送ってもらえると本当に助かる」と伝えたと明らかにした。

「そうしたら首相は(中略)ちょっと、チームに相談したいと言う」

「私は言った。チームの心配はいらない。あなたにはチームはない。あなたは首相だ。決断できると。(中略)だから非常に残念だ」

イギリス政府関係者は、スターマー氏は迅速な単独判断ではなく、軍と同盟国がチームとして何ができるかを把握しようとしていたのだと強調した。

英海軍の45型駆逐艦ドラゴンは、イギリスの中東地域での防衛活動に加わるため、3月10日に英ポーツマスを出港した。主な任務は、今月初めにイラン製ドローンの攻撃を受けた地中海東部のキプロスのアクロティリ空軍基地を防衛することだ。

アラビア半島を中心とした中東地域の地図。イランとイスラエル、周辺国とガザの場所が示されている。オマーン湾のホルムズ海峡は、世界の主要原油輸送路になっている

スターマー氏は先に、ホルムズ海峡の再開は「簡単な作業ではない」と述べた。

「だからこそ、我々はヨーロッパのパートナーを含むすべての同盟国と協力し、地域での航行の自由をできる限り早く回復し、経済的影響を和らげることができる、実行可能な共同計画をまとめている」

スターマー氏は、アメリカや湾岸諸国ともこの問題を協議していると述べ、いかなる行動も「できるだけ多くのパートナー」によって合意される必要があると語った。

ホルムズ海峡の防衛に王立海軍を投入するよう求めたトランプ氏の要求を拒否しているのか問われると、スターマー氏はイギリスは「選択肢を検討している」と述べつつ、中東地域にはすでに機雷掃海システムが存在すると強調した。

イギリスとアメリカの関係について質問されると、両国は「強固な同盟国」だと述べたものの、「自分はイギリスの最善の利益になると考える行動を取る」と付け加えた。

イギリスはすでに、自律型の機雷掃海システムを中東地域に配備しているが、唯一常駐していた機雷掃海艇ミドルトンは最近、予定されていた整備のためポーツマスに戻った。

そのため英海軍は、乗組員を危険にさらさずに機雷を探知・無力化するために設計された、新開発の海上ドローンを提供するとみられている。

トランプ氏とNATO同盟国との確執

トランプ氏は英経済紙フィナンシャル・タイムズの取材で、ホルムズ海峡の再開に加盟国が協力しなければ、北大西洋条約機構(NATO)は「非常に悪い」将来に直面すると警告した。

しかし、ドイツの政府報道官は、この戦争は「NATOとは無関係」だと強調。NATOは領土防衛のための枠組みだと付け加えた。

ドイツのボリス・ピストリウス国防相は、同国は「軍事的参加はしない」と述べたものの、海峡を守るための外交努力を支援する用意はあると語った。

「ドナルド・トランプ氏は、ホルムズ海峡で、強力なアメリカ海軍でさえ単独では対処できないと考えている問題に、ヨーロッパのフリゲート艦数隻が何をもたらすと期待しているのか」とピストリウス氏は述べた。

この見解は、元英陸軍トップのニック・カーター陸軍大将の考えとも一致している。

カーター氏はBBCに対し、NATOは防衛同盟として設計されたものであり、「同盟国の一つが選択的な戦争を始め、それに他のすべての国を従わせるために作られた同盟ではない」と語った。

欧州連合(EU)は16日に外相会合を開き、ホルムズ海峡防衛について協議した。カヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表(外相に相当)は、EUの紅海での海軍任務の権限を変更するという提案には「支持の機運がない」と述べた。

暖房費の補助を発表、「任務拡大」との懸念も

英最大野党・保守党のケミ・ベイドノック党首は、「首相が計画策定の過程に関与しているかが不明確だ。すべての同盟国が、首相の対応の遅さを懸念しているようだ」と、スターマー氏を批判した。

「私は、首相がアメリカとの協議を十分に深めていないことを懸念している。しかし、(ホルムズ海峡に)艦船を送り始める前に、計画がどうなっているかを把握する必要がある」

野党・自由民主党は、ホルムズ海峡の安全確保のためにイギリスが艦船を派遣すべきではなく、戦争の緊張緩和に注力すべきだと主張している。

与党・労働党のアンディ・マクドナルド議員は16日の下院で、イギリスがより広い戦争に巻き込まれないとするスターマー氏の判断は適切だと述べた。一方で、トランプ氏がホルムズ海峡の「警備」を支援するようさらに求めていることについて、「大勢が警告してきた、いわゆる任務の拡大そのものだ」と警鐘を鳴らした。

こうしたなかスターマー氏は、暖房用の石油価格の急騰によって影響を受けた「立場の弱い」世帯に対する補助政策に、5300万ポンド(約110億円)を充てると発表した。

イギリスでは6月末まで光熱費の上限が規制されているが、これはガスや電気を利用する消費者のみで、石油を使用する世帯は規制対象外となっている。