デンマーク、米がグリーンランド侵攻すれば滑走路爆破を計画していたと報道

地面近くまで胴体を下げた灰色の機体に「王立デンマーク空軍」と白い文字で書かれた輸送機から、迷彩服姿の兵士たちが降りてきている。手前に、空港内の移動用車両が停まり、蛍光色のベストを着た人たちが、白い氷の見える駐機場に待機している

画像提供, Reuters

画像説明, グリーンランドに到着したデンマーク空軍の兵員たち(1月14日、ヌーク)
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ヤロスラフ・ルキフ

デンマークの公共放送は19日、アメリカがデンマーク自治領グリーンランドに侵攻した場合、デンマーク政府はグリーンランドの滑走路を爆破する計画だったと伝えた。

デンマークの公共放送DRによると、デンマークが今年1月に軍の部隊をグリーンランドへ派遣した際には、ドナルド・トランプ米大統領が米軍にグリーンランド侵攻を命じる事態に供え、主要空港の滑走路を爆破する準備を整えていたという。

DRは、デンマーク政府と軍内部の情報筋、さらに欧州同盟国の関係者の話として、戦闘が発生した場合に備え、負傷者を治療するための輸血用血液もグリーンランドに運ばれていたと報じた。

これを受けて英紙フィナンシャル・タイムズは、欧州当局者2人がこの報道内容を認めたと伝えた。デンマーク国防省はBBCに対し「コメントはない」と述べた。

匿名で取材に応じたデンマーク軍高官はBBCに、「安全保障上の理由から、この作戦を知っていたのはごく限られた人物だったはずだ」と話した。

アメリカとデンマークは共に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国だが、デンマークの自治領グリーンランドをめぐり、トランプ米政権と欧州の同盟国は厳しく対立してきた。

トランプ氏は、グリーンランド併合を望んでいると繰り返し発言している。グリーンランドの自治政府首脳とデンマーク政府はどちらも、この要求を一貫して拒否してきた。

ヴェネズエラの事態で緊張高まる

DRは報道内容について、デンマーク政府と軍の最上層部、さらにフランスとドイツの同盟国の情報源12人に対する取材に基づくものだと説明している。

消息筋たちによると、デンマーク政府はフランス、ドイツ、そして北欧諸国に対し、トランプ氏に対応するため政治的支援を求め、欧州の結束を強く示し、グリーンランドでの共同軍事活動を増やすことを求めたという。

関係者によると、米軍が1月3日に南米ヴェネズエラの首都を強襲したことで、事態は一気に緊迫した。米軍特殊部隊はこの時の作戦で、ヴェネズエラのニコラス・マドゥロ大統領(当時)を電撃的に拘束し、アメリカへ移送した

トランプ氏は1月4日には記者団に対し、「2カ月ほどしたらグリーンランドのことを考え始める」と述べ、「国家安全保障上、我々にはグリーンランドが必要だ。極めて戦略的だ」と持論を繰り返した。さらに根拠を示さず「グリーンランドは今、ロシアと中国の船であふれている」とも述べた。

デンマークの安全保障幹部はDRに対し、「トランプ氏がグリーンランドを掌握したいと繰り返し、さらにヴェネズエラであのようなことが起きた以上、我々はあらゆるシナリオを真剣に受け止めざるを得なかった」と話した。

一方、欧州当局者はフィナンシャル・タイムズに、「ヴェネズエラの後、(アメリカは)自分たちには奇跡が起こせる、何でもできると、そういう気になっていた。あれをとって、この国を取ろうと、そういう感じだった」と述べた。

その後すぐに、デンマーク、フランス、ドイツ、ノルウェー、スウェーデンの兵士からなる小規模部隊が、グリーンランドの首都ヌークと空港のあるカンゲルルススアークに入った。

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は当時、この先遣部隊を近く「陸・空・海の戦力」で増強すると述べた。

DRによると、続く派遣部隊には、デンマーク軍の精鋭と、寒冷かつ山岳地帯での戦闘訓練を受けたフランス部隊が含まれた。デンマークの航空機とフランスの海軍艦も北大西洋へ向かった。

この派遣は、デンマーク主導の合同軍事演習「アークティック・エンデュランス作戦」の一環だと説明されたが、DRによると、実際の理由はアメリカの侵攻に備えることだったという。

DRによると、デンマーク政府は、アメリカが侵攻した場合、デンマーク軍は応戦すると決定。その場合、部隊はヌークとカンゲルルススアークの滑走路を爆破し、米軍機の着陸を阻止する方針だったという。

「侵攻によってアメリカが担うコストを、引き上げる必要があった。アメリカがグリーンランドを手に入れるには、敵対行為を実施する必要があるという、そういう状況にする必要があった」とデンマーク国防関係者はDRに対して話した。ただし、実際には、現地の部隊に米軍の攻撃を阻止する力はなかっただろうとも、この国防関係者は認めた。

グリーンランド奪取のための武力行使を否定していなかったトランプ氏は1月21日スイス・ダヴォスの世界経済フォーラムで、「武力は使いたくない。武力は使わない。アメリカが求めているのは『グリーンランド』と呼ばれる場所だけだ」と述べた。

トランプ氏はその後、妥協点を見出し対立の緩和を目指すために、「即時の交渉」を求めると述べた。