フィリピンがエネルギー非常事態を宣言、イランめぐる紛争では世界初

ガソリンスタンドで赤いキャップと白と赤が基調の制服を着た男性従業員がバイクに給油している

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スランジャナ・テワリ・アジアビジネス担当編集委員(マニラ)、ジェシカ・ローンズリー記者

フィリピンは24日、国家エネルギー非常事態を宣言した。米・イスラエルとイランの戦争を受けたものとしては、世界初。

フェルディナンド・マルコス大統領はこの日、国内のエネルギー供給の「利用可能性と安定性に差し迫った危険が生じている」として、エネルギー安全保障を確保するための大統領令に署名したと述べた。

開戦以来、イランは重要な石油輸送路であるホルムズ海峡を事実上封鎖しており、この動きが原油とガスの価格を押し上げている。

フィリピンは石油の98%を湾岸地域から輸入しており、2月28日に戦争が始まって以来、同国の軽油とガソリンの価格は2倍以上に跳ね上がった。

マルコス大統領は、この措置によって政府がエネルギーの安定を確保し、より広範な経済を守るための対策を講じる法的権限を得ると述べた。

大統領令の下で、燃料、食料、医薬品などの必需品を秩序立って分配するための委員会が設置された。

また、供給を補強するために、政府に燃料と石油製品を直接購入する権限も与えられた。

この宣言は、大統領が延長または解除を発表しない限り、今後1年間効力を維持する。

フィリピンでは24日、ガソリンとディーゼル燃料の価格が再び急騰し、2月の戦争前の水準の2倍以上に達した。

同国の主要な労組連合の一つであるキルサン・マヨ・ウノ(KMU)は、この緊急事態宣言を強く批判し、これは政府が石油危機への対応に失敗したことを「認めた」ものだと非難した。

また、マルコス政権は状況を過小評価したと指摘。以前の「すべては正常だ」という主張は誤解を招くものだったと批判した。

KMUはさらに、大統領令に盛り込まれた「反労働者的条項」と呼ばれる内容に懸念を表明。とりわけ、経済活動を妨げると見なされる、ストライキを含む行為を制限する可能性のある条項を問題視した。

そのうえで、燃料価格がすでに所得を圧迫する中で、こうした条項が労働者の抗議行動を事実上、制限しかねないと警告した。

一方、大手公益企業を率いる実業家のマヌエル・V・パギリナン氏は、この宣言を支持した。

同氏は声明で、自らの企業も高騰するエネルギーコストの負担を感じており、危機が事業運営に影響を及ぼし始めていると警告したうえで、政府は選択可能な「すべての選択肢」をもって、この困難な局面を乗り切るべきだと語った。

こうしたなか、運送業者や配車サービスなどを含む代表団体は、26日と27日に2日間のストライキを計画している。燃料費の高騰に加え、政府の対応が遅い、あるいは不十分だと表明するためだという。

ストライキを主導する運輸労組連合ピストンは、燃料税の撤廃や石油価格の引き下げから、規制緩和の中止と国家統制の導入に至るまで、幅広い要求を掲げている。また、運賃の値上げと賃金の引き上げも求めている。

中東で紛争が始まって以降、フィリピン政府は運輸ドライバーへの補助金を導入した一方で、フェリー便を減便。また、燃料を節約するため、公務員に週4日勤務制を導入した。

同国のシャロン・ガリン・エネルギー相は24日、国内の燃料備蓄が約45日分残っていると述べた。

また、液化天然ガス(LNG)の価格高騰に対応するため、国内のエネルギー需要を満たすうえで、石炭火力発電所への依存を「一時的に」強めると明らかにした。

アジア地域は、ホルムズ海峡封鎖の影響をとりわけ受けやすい。昨年、この海峡を通過した石油とガスのうち、約9割が同地域向けだった。