イラン外相、アメリカと交渉していないと表明 米政府は協議が「進行中」で「生産的」と

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ポーリン・コラ
イランのアッバス・アラグチ外相は25日、米・イスラエルとの戦争終結に向けてイランはアメリカと交渉していないし、「そのつもりもない」と発言した。この直前には、米ホワイトハウスの報道官が、協議は「進行中」で「生産的」だと述べていた。
アラグチ外相は、アメリカが仲介者を通じて「案」を送ってきていると述べた。これは、アメリカが仲介国を通じてイランに提示したとされる15項目の計画に言及しているようにも見えた。
外相は、この計画を明確に全面否定はしなかったものの、匿名のイラン高官が以前示していた5項目の対案の一部を繰り返し取り上げた。
戦争は2月28日にアメリカとイスラエルのイラン空爆で始まった。イランはその後、アメリカと同盟する湾岸諸国を攻撃している。通常は世界の石油とガスの約2割が通過するホルムズ海峡をイランが事実上閉鎖していることから、燃料価格は高騰し、世界的に不況が懸念されている。
トランプ氏の計画には何が含まれているのか
イスラエルのチャンネル12によると、米・イスラエルは戦争終結の条件としてイランに複数の要求をしている。
そのほとんどは、戦争開始の理由として米政府関係者たちが挙げてきた、イランの核兵器開発に関するもの。イランが核兵器を作っているという米・イスラエルの主張は、これまで裏付けられてこなかった。イランもその意図を否定し続けている。しかし、米・イスラエルは停戦の条件として、イランの核兵器開発の阻止と、ミサイル計画の脅威の排除を挙げているという。
報道によると、米・イスラエルは、イランが「核兵器を追求しないこと」を約束し、核施設を解体し、保有する濃縮ウランを国連の監督機関、国際原子力機関(IAEA)に引き渡し、査察を受け続けることを要求している。
さらに、米・イスラエルは、以下の内容をイランに要求しているという。
・ミサイル計画を射程と数の両面で制限する
・レバノンのヒズボラ、ガザ地区のハマス、イエメンのフーシ派など、地域の代理勢力への資金提供を停止する。
・ホルムズ海峡を再開し、「自由な海上回廊」として機能させる
こうした条件と引き換えに、国際的な対イラン制裁は全て解除されると、米・イスラエルは提案しているという。
イランに対する全面制裁は、米・イスラエルが昨年夏に複数の核関連施設や軍事基地を爆撃した後、イランが核施設の査察受け入れを停止したことを受けて、昨年11月に再開された。
こうした報道内容が正しいのか記者団に問われると、ホワイトハウスのキャロライン・レヴィット報道官は、「ホワイトハウスはその計画全体を一度も認めていない。真実の要素は含まれているが、私が読んだ一部の記事には、完全には事実でない部分もあった」と述べた。
イランのアラグチ外相は、「いくつかの案」が政府首脳に提示されたとして、「もし立場を示す必要があるなら、必ず決定される」と述べた。
イランの対案とは
アラグチ外相の発言の数時間前には、イラン国営の英語放送局プレスTVが匿名の「政治治安担当の高官」の発言として、戦争終結のための5項目の条件を報道していた。「敵による攻撃と暗殺の完全停止」が条件の一つとして含まれる。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相とその政権はしばしば、「タコの頭を切り落とす」と述べてきた。戦争初日にイスラエルがテヘランに行った空爆で、当時のアリ・ハメネイ最高指導者が殺害され、その後も複数のイラン高官が殺害されている。
他の条件には、「イスラム共和国に対して戦争が再開されないことを確実にする、具体的な仕組み」が含まれる。ただし、どのような保証が提供可能なのか、またどの国が関与し、監視するのかは不明だ。
経済面では、イランは戦争被害の補償と賠償を求めており、ホルムズ海峡を単独で管理する権利も要求している。
重要な点として、イランはイスラエルに対し、イランの地域同盟勢力に対する攻撃を停止するよう求めている。
イスラエルは、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラへの攻勢を強めている。24日にはヒズボラによるイスラエル北部への攻撃がやむまでレバノン国内の拡大された緩衝地帯に軍を維持すると発表した。
匿名のイラン高官は一連の条件について、戦争開始直前の2月末にジュネーヴで行われた協議でイラン政府が提示した要求に、さらに追加されるものだと政府高官は述べたと、プレスTVは伝えている。
戦争終結は見えてきたのか
トランプ氏は24日、イランが「非常に強く合意を望んでいる」と述べ、イラン側の交渉担当者がアメリカに、石油とガスに関連する「非常に重要な贈り物」を与えたと話した。その「贈り物」はホルムズ海峡に関係していると述べたが、詳細は明らかにしなかった。
戦争終結に向けた協議は、米政府のスティーヴ・ウィトコフ大統領特使と、トランプ氏の娘の夫ジャレッド・クシュナー氏が主導するとみられている。
報道されているアメリカ側の和平案は、イスラエルとハマスの間でガザ地区を巡り2年以上続いた戦闘を終わらせた際の、手法に似ているように見える。
もし同じ手順を踏むなら、どのような草案について交渉するにしても、まず停戦が宣言される必要がある。
イスラエルのチャンネル12は、イスラエル首脳部は現時点でイランへの攻撃を一時停止することに難色を示すかもしれないと伝えている。ガザでの交渉の際にも、ネタニヤフ首相は停戦に慎重だった。
イスラエルのニル・バルカト経済相はBBCに対し、イランがトランプ氏の条件に合意する可能性は低いと述べた。
トランプ氏の提案はパキスタンを通じてイランに伝えられたとされている。トルコとエジプトも、戦争終結への取り組みに関わっている様子。
エジプトのバドル・アブデルアティ外相は25日、自分はイランのアラグチ外相といつでも連絡がとれると話した。
周辺国の仲介が、トランプ氏や米政府高官が言及した協議の一部に関するものかは不明。
トランプ氏は、自分の政権が誰と話しているのかを明かさず、「こちらは適切な相手と取引している」と述べるにとどめている。
イランの新しい最高指導者モジタバ・ハメネイ師は、父アリ・ハメネイ師が殺害された同じ攻撃で負傷して以来、公の場には姿を見せておらず、協議相手に含まれているとは考えられていない。
米・イスラエルは、イランが新しい核合意に向けてアメリカと交渉している最中にイランを攻撃した。それだけに、イランの指導部はアメリカとの協議に極めて慎重になっているとされる。
さらに現在は、米軍部隊が湾岸地域に派遣されている最中でもある。ホルムズ海峡の開放やイラン国内の一部領土の確保に、米軍地上部隊が投入される可能性も指摘されている。









